病院の中庭です。春には一面タンポポの花が咲きます。当医局が「お花畑」状態という意味ではありません。念のため。

2011年9月10日土曜日

1/4の奇跡


いまから書くのは山元加津子というある養護学校の先生が講演会で話してくれた雪絵ちゃんの話です。「いちじくりん」http://itijikurin.blog65.fc2.com/というHPにも紹介されています。  

雪絵ちゃんは病弱養護学校の生徒さんで多発性硬化症という神経の難病を持っていました。雪絵ちゃんは12月28日の雪の降ったきれいな朝に生まれ、同じ日に眠るように亡くなった中学生です。

 雪絵ちゃんは運動も感覚も麻痺してしまう大変な病気を持っていたけれど、「私は病気であることを後悔しないよ。この病気である雪絵をそのまま愛しているよ」と口癖のように言っていたそうです。先生が「どうして?」と尋ねると、「だってね、この病気になったからこそ気がつけたことがいっぱいあるの。もしそうでなかったらその素敵なことに気がつけなかったと思うの。気がついている自分が好きだからこれでよかったの」って答えたそうです。「この病気になったからこそ出会えた大好きな人が周りにいっぱいいるし、目や手や足が動かなくなってもこの病気であることを決して後悔しない。病気の自分を丸ごと愛しているんだ」って言ったんだそうです。

その雪絵ちゃんが、言ったことや話してくれたことや書いてくれたことに素敵なことがいっぱいあったので、先生はいつも、病気で動けない雪絵ちゃんから元気や勇気をいっぱいもらっていたそうです。だからそれらを先生は「幸せ気分」という雪絵ちゃんの本にしました。その中にこんな話が書かれています。

 昔、人体ⅢっていうNHKの番組があり、科学者たちからこんな話がありました。
「アフリカのある村でマラリアが大発生して、その村の人がどんどん死んでいきました。しかし、その村は絶滅しませんでした。なぜなら、マラリアにかからない人がいたからです。科学者たちが調べたら、鎌状の赤血球を持っている人はマラリアにかからなかったことがわかりました。さらに、鎌状赤血球を持っている人の兄弟姉妹を調べたら、そのうちの1/4の人は鎌状赤血球も障害も持っていました。2/4の人たちは、鎌状赤血球を持っていて障害はありませんでした。残りの1/4の人は、鎌状赤血球も障害もない人たちでした。」

マラリアが大発生したときに、鎌状赤血球を持っていない人たちは亡くなってしまいますが、この3/4の人は生き残れるというわけです。そして、科学者は言いました。「この村を救ったのは鎌状赤血球を持っていて障害のない2/4の人たちである。けれども、この2/4の人が、ここに存在するためには、この1/4の障害を持っている人たちが存在しなければならなかった。障害を持っている人はいらないんだと思って切り捨てていっていたら、けっして、この2/4の人たちは生まれていなかっただろう。しいていえば、この村を救ったのは、この1/4の障害を持った人である」ということでした。

 「私たちが今、元気に明日に向かって歩いていくことができるのは、過去に、病気や障害を持って、苦しい生活を送ってくれた人がいるおかげである。もしその人がいなかったら、私たちは今ここにいないことでしょう。今、私たちが生きているこの社会にも、障害や病気を背負っている人はたくさんいます。その人達は、未来の私たちの子孫のためにも、私たちが支えていかなければならない大切な人たちなのです」。そのようにこの番組は結んだそうです。

先生が雪絵ちゃんにこの話をしたら「この話、私たちだけが知っていたらもったいないね。たくさんの人が知っていてくれたらいいね」と雪絵ちゃんは言ったそうです。「人は障害があるとかないとか、そんなことじゃなくって、誰もがみんな大切だっていうことも科学的に証明されているって、世界中の人が知っている世界に先生がしていってね」って亡くなる前に雪絵ちゃんは先生に真剣に頼んだそうです。

雪絵ちゃんの真剣な願いをなんとか実現しようと、山元先生はこの話を本やCDや映画(1/4の奇跡)にして全国を周って講演されています。ひとりでも多くの人が雪絵ちゃんの願いを知り、病気や障がいへのマイナスの思いこみのない世の中になってほしいと私も願っています。

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