病院の中庭です。春には一面タンポポの花が咲きます。当医局が「お花畑」状態という意味ではありません。念のため。

2011年1月23日日曜日

ウィリス先生の深度覚測定器

ブログ管理担当者のまさぞうです。


今回はウィリス先生の診断道具の解説の続きです。
皆さん、これ何だか分かりますか?


これは、「Dr.ウィリスベッドサイド診断」の
116ページに出てくる深度覚測定器の実物です。


この写真ではちょっとわかりにくいのですが、
四角い木片の表面を削って、
その中央部に幅2mm、高さ2〜3mmの細長い隆起を残してあります。
(一方の端は完全に平面、もう一方の端が2〜3mm隆起してます)


ウィリス先生はログハウスを自分で建てた経歴の持ち主であり、
この深度覚測定器も木片を削って自作していましたが、
私にはそんな技術も根性もないので、
知り合いの仏壇職人の方にお願いして、
お金を払って作ってもらいました。
(彼は趣味でルアーを自作しているとのことで、
これくらいの工作は朝飯前だったようです。)
その職人さんは塗りが専門だったため、
私の測定器にはウィリス先生のものにはない
塗りが施されており、
一段と高級感あふれる仕上がりです(笑)。


「ベッドサイド診断」には詳しい使い方は書いていないのですが、
この深度覚測定器は深部感覚(位置覚)の検査に使います。
(ビデオには出てますね。)
従来は患者に閉眼させて手足の指などを他動的に屈曲・伸展させ、
その状態を患者に当てさせる、というのが一般的なやり方でしたが、
この測定器(ただの木片ですけど)を使えば
それを定量化できる、というのが大先生の主張です。
つまり平坦な端から何cmいったところで隆起を蝕知できるかで、
深度覚(位置覚)障害の程度を評価できるというのです。


実は「ベッドサイド診断」がバカ売れしたら、
将来時代遅れになるだろう訳注をすべて削除し、
表紙を革張りの豪華本にして、
この深度覚測定器と例のビデオの3点セットにして
定価1万円くらいで2匹目のドジョウを狙うよう
医学書院にすすめようと思っていました。
ところが最近は「ベッドサイド診断」の売れ行きも
頭打ちみたいで(笑)、
野望はかなえられそうもありません。


ちなみに去年末には
ウィリス先生が腎不全と脳梗塞で死にそうな怪情報を流し、
大騒ぎしましたが、
これはヤブ精神科医の診たて違いでした(笑)。
大先生は今も元気にしておられ(車の運転は止められましたが)
年末にカナダへ送った例の検査本ファイルの原稿に
修正を加えておられます。
検査本電子化に御協力いただいたボランティアの皆様には
お騒がせしたことをお詫びいたします。
また電子化されたファイルの完成までには
もう少しお待ち下さい。


このブログも始めてそろそろ半年になりますが、
肝心の就職希望者はまだ現れず、
この間メールが来たと胸ときめかせたら、
「成人の発達障害勉強会」への問い合わせでした(笑)。
全国の精神科医の皆さん、
十勝はとてもいいところですよー!
今朝の最低気温はマイナス8度でしたけど(笑)。

2011年1月13日木曜日

HOTEL  TAITO

 モール温泉といえば十勝川温泉が有名ですが、実はモール温泉は道内のあちこちにあり、タンチョウで有名な鶴居にもあります。今回はその中の一つHOTEL TAITOを紹介します。
 オーナーはプロの写真家で、タンチョウの写真で有名な方です。ホテルの規模に比べ、お風呂は充実しており、露天の岩風呂の他、男湯には一人用の五右衛門風呂まであります。
 お湯は紅茶色で、PH9.2というアルカリ重曹泉。もちろん源泉かけ流しで極上のツルツル感が味わえます。
 近くには他に2つの温泉がありますが、それぞれ源泉が異なり、こちらも源泉かけ流しです。
 もうすぐタンチョウのシーズンですのでぜひいらしてください。

2011年1月8日土曜日

心理治療を学ぶ

        精神科指定医研修のために今の病院に赴任したのが3年前になるが、発達障がい児者の心の問題を考えている時に、この分野でのオピニオン・リーダーである杉山登志郎先生の文章(発達:2008・10)に出会った。

        「遺伝子によって蓄えられた情報は、環境によって発現の仕方が異なる」「発達障がいの適応を不良にするものは情緒的な問題であり、それを引き起こすのは心理的な外傷体験(トラウマ)である」「発達障がい臨床において、成長の途中で蓄えられてしまったトラウマの治療を積極的に行っていく必要がある」と書かれていた。

        なるほど確かにそうだと腑に落ちた私は、以来、トラウマ治療について積極的に学び始めた。そう決心すると不思議なくらいチャンスが次々と訪れ、「認知行動療法」「EMDR(眼球運動による記憶の脱感作と再処理)」「SE(ソマティック・イクスペリエンス)」「臨床催眠療法(ヒプノティックセラピー)」「催眠療法(ヒプノセラピー)」などを学ぶことができた。

        何事も初めは教えられたことを教えられた通りに実践してみることが大切である。そうすると、それぞれの技法の予想もしない効果や失敗に何度も驚かされることになる。技法の違いがあってもトラウマ治療に底通する技術やマインドに気がつくようになり、ある程度実践して自信がもてるようになるまでは試行錯誤の連続である。

        医師は教科書からの知識以上に患者さんの病気や人間から学ぶことができる。トラウマ治療に限ったことではないが、患者さんの病気を診立て治療する際に、患者から教科書には書かれていないさまざまなことを教えてもらい気づかせてもらい学ばせてもらえる。

        トラウマというのは誰の心にも必ずあるものであり、それほど人間の心というのは奥が深い。日常は忘れていたり、なかなか思い出せなかったり、自分では思い出せもしないトラウマが潜在している。

        心理治療を学ぶ中で、それぞれの技法を通じて講師の先生より自分のトラウマの治療を受ける機会に恵まれ、その癒しも経験できる。そうやってトラウマやトラウマ治療に対しての感受性を磨いていくことになる。心理治療には興味や素質も必要だが、それ以上に練習や経験がものをいう世界である。

        SE治療では「1度の練習で3回は失敗しなさい。失敗から学びなさい」と言われ、催眠療法では「上手な人は練習を何度も繰り返した人、失敗を何度も繰り返して学んだ人」と言われ、ヒプノセラピーでは「失敗だと思うことはあっても失敗はない」と言われた。

        それらの言葉に勇気づけられながら、教えられたことを守りつつ、失敗を恐れずに、いまだほとんど手のつけられていない発達障がい児者のトラウマ治療に向けて努力を重ねている。