病院の中庭です。春には一面タンポポの花が咲きます。当医局が「お花畑」状態という意味ではありません。念のため。

2012年12月24日月曜日

がんばれ、寺澤秀一先生!

ブログ管理担当のまさぞうです。

さる11月10日に東京で
「第4回 日本こころとからだの救急学会」
に参加してきました。

これは主にからだの救急医療の関係者の皆さんが集まって、
一般科の救急室を受診する精神科の患者さんにどう対応するか、
ということを勉強している学会です。

まだ比較的新しく、こぢんまりとした集まりですが、
身体の救急関係の有名な先生のお話が聞けるので、
私はほぼ毎回参加させていただいています。

今回のメインは、福井大学医学部教授の
寺澤秀一(てらさわ ひでかず)先生の講義でした。

この先生は「研修医当直御法度」という
若手臨床医の間で非常に有名な本を書かれた方で、
日本の身体科救急医療を従来の高度専門医療中心から
地域医療プライマリケア中心へと方向転換させた立役者です。
能力・学識はもちろん、人格的にも素晴らしく、
私が日本人で最も尊敬するお医者さんの一人です。
(ちなみにこの寺澤先生は沖縄県立中部病院出身で、
かのウィリス大先生のこともよく御存知です。)

寺澤先生は福井県で長年救急医療の最前線に立ってこられた関係で、
原子力発電所の事故が起こった時の救急対応についても造詣が深く、
昨年の福島県での原発事故の時も
頼まれて医療チームの指揮をとられたそうです。
今回の学会講演もこの時の経験に基づくものでした。

寺澤先生の講義はいつものようにユーモアにあふれた語り口でしたが、
内容は驚くべきものでした。
ごくかいつまんでいえば、
福島の原発事故は、発電所外の陸上における放射線被害に関しては
チェルノブイリとは比較にならないくらい軽微な事象であり、
核放射線による一般住民の健康被害は心配する必要はない。
むしろ心配すべきは誤った政府介入と偏ったマスコミ報道に伴う風評被害と、
周辺自治体の住民・家畜への悪影響である
というものです。

詳しい事情・根拠については
「福島 嘘と真実 東日本放射線衛生調査からの報告」
著者:高田純、発行:医療科学社
をご覧下さい。
放射線防護学の専門家から見た福島原発事故の評価がわかります。

私自身ショックだったのは、上述の事故の実情もさることながら、
それに対する日本国民の反応があまりに感情的だったことです。

まあ私自身、去年寺澤先生が原発作業員の医療にあたっていると聞いた時には
「すごい勇気だなぁ。決死隊みたいなものだ」
と思っていたのですから、あまり人のことは笑えません。
それでも今、寺澤先生が「福島県民を危険にさらした」と
訴訟を起こされていると聞けば、笑ってばかりもいられません。

寺澤先生は日本有数のすぐれた医療者であり、
その専門的知識と客観的事実をもとに
不眠不休で原発作業員と周辺住民の医療ケアにつくされました。
先生の処置・判断に客観的誤りがあったというならともかく、
「放射能はおそろしい」という感情的理由だけで
福島県民に対する恩人を告訴するとは・・・。

たしかに告発権は国民全般に与えられた権利ですが、
だからといって何でも訴えていいというわけではないでしょう。

裁判で無罪が証明されればそれでいいじゃないか、
という意見もあるかもしれませんが、
その無罪判決に至るまでの時間、労力、精神的ストレスは
誰が埋め合わせてくれるのでしょう?

寺澤先生に1日無駄な仕事をさせれば、
その1日分、日本の医学界(と国民)は損をするのです。
たとえ無罪確定の後、
名誉毀損でわずかな賠償金が得られたとしても、
失われた時間と労力は戻ってきません。

個人の権利を尊重する姿勢も結構ですけれど、
権利を行使するにあたっては
それ相応の節度と良識が求められるはずです。

過去の歴史を見ても、
愚かな民衆が国の英雄を告訴した例はありますが、
日本人のモラルもここまで落ちたかと、
この国の未来に望みを失う感じがしました。

以上、いつものおちゃらけムードとは異なり、
ネットウヨクのようなコメントになってしまいました
でも、がんばれ、寺澤先生!

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