病院の中庭です。春には一面タンポポの花が咲きます。当医局が「お花畑」状態という意味ではありません。念のため。

2014年2月11日火曜日

ウィリス先生の身体診察ビデオ(その3)

お久しぶりです。ブログ管理担当のまさぞうです。

ここ数年、毎年元旦にG.C.ウィリス先生の身体診察ビデオを
見直して勉強するようにしています。

今年もほぼ1年ぶりに今は亡き大先生のベッドサイド講義に参加しましたが、
毎年少しずつ新しい発見があります。
http://www.youtube.com/user/masazo2008/videos

そもそもこのビデオは、
視診・聴診・触診といった基本的診察手技のお手本を記録する目的で、
2009年11月にカナダのウィリス先生の御自宅におじゃました際、
ぶっつけ本番の1回撮りで撮影されました。

大先生はその時すでに体調完全ではなく、
1時間あまりの撮影でかなりお疲れになったようでした。
撮影後、近くの町に昼食を食べに行った時、
起立性低血圧の前失神発作を起こされたことを思い出します。

事前に「身体診察のビデオを撮りたい」とお願いしておいたところ、
ウィリス先生御自身は今あるものとは少し違ったプランを
持っておられたようでした。
それでも撮影前日に
「短時間で全身をスクリーニングする方法を実演して下さい」
とお願いすると、すぐにこちらの意図をくんで下さり、
私の想像以上に素晴らしいものが出来上がりました。
(自画自賛ですね。)

このビデオの特長は、
世界最高レベルの臨床指導医による「本当に使える」身体診察の実演を、
世界のどこからでも無料で見られる、というところにあります。
画質は悪く、逆光で、当時のYouTubeの時間制限により
1本15分で3部構成のこまぎれビデオになってしまいましたが、
内容は市場に出回る高価な医療講義DVDを
はるかに上回っているはずです。

このビデオはウィリス先生の著書
「Dr.ウィリス ベッドサイド診断」
を補完する役割を持ちます。
特に打診、心臓や腹部の触診、腱反射弛緩時間の評価
といった最近あまり使われない診察技術は、
文章を読んだだけでは絶対に習得できません。
(そもそも現在の日本でこの種の診察技術を
実際に使える指導医が何人いるか・・・。)

私自身、身体診察についてはそれなりに詳しいつもりでしたが、
頸静脈圧の測定法について
「枕を入れて患者の上体を起こし、
患者の頸部を軽く圧して(外)頸静脈を見ればいいんだ」
とあっさり説明された時は、正直いって驚きました。

以前有名な某JC先生の臨床講義に参加したときには、
「外頸静脈では正確さに欠けるから」と
患者の頸部をいろいろな角度からペンライトで照らして
内頸静脈の拍動をみる技術を教えられました。
JC先生がやるのを見ると簡単そうでも、
自分でやると全然できません(笑)。

ウィリス先生に「外頸静脈でもいいんですか?」と尋ねたら、
「あぁ、どうせ外頸静脈と内頸静脈はつながっているからね」
とのこと。
「でも、先生の本(Dr.ウィリス ベッドサイド診断)には
『内頸静脈がどうしても見えない場合のみ外頸静脈を使う』
と書いてありますけど・・・」
とはとても言えませんでした(笑)。

またこのビデオの恐るべきところは、
Part 2の11分20秒あたりでウィリス先生が
「このルーティン診察ですべての主要な疾患を除外できます」
とさりげなくおっしゃっていることです。

呼吸器・循環器・神経系・消化器系・内分泌系など、
臨床医学のあらゆる分野を究めた人でなければ、
このセリフは吐けません。
身体所見を勉強したいが、最低限何を覚えればいいのか
分からない若いお医者さん、
また検査設備の少ない僻地の医院や、
訪問診療に従事する医療スタッフにとっては、
このウィリス先生の実演は本当に価値あるものになるはずです。

私自身、このビデオを制作したときには、
「バッハ、モーツァルト、ベートーベン、ショパンといった
大作曲家が、自作を解説付きで演奏しているようなビデオだ」
と考え、医学界に大反響を巻き起こす(!)と期待しましたが、
残念ながらこれは誇大妄想でした(笑)。

しかし、本当によい医者になりたいと思う臨床医にとっては、
このビデオは値段をつけられない宝物です。
「所要時間7〜8分の身体診察でほぼすべての主要疾患を除外できる!」
もちろん無症状の早期癌なんかは無理ですが・・・。

皆さんもぜひ伝説の名医G.C.ウィリス先生の
ベッドサイド講義に参加してみてください。
最近アクセス数も頭打ちですし(笑)。

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