病院の中庭です。春には一面タンポポの花が咲きます。当医局が「お花畑」状態という意味ではありません。念のため。

2015年2月19日木曜日

神経発達症の人のための人間関係のマニュアル01

ブログ管理担当のまさぞうです。

Mさんとの約3年越しの約束で,
「神経発達症の人のための人間関係のマニュアル」
を作ることにしました。

Mさんのリクエストは,
「これさえやれば職場で円滑にやれる」
という対人関係のコツを教えてくれというものです。
決して簡単なテーマではありませんね(笑)。

儒教の古典,四書五経の一つである
「大学」に「絜矩(けつく)の道」というのがあります。
「大学」第六章第一節にいわく,

ここをもって,君子には『絜矩(けつく)の道』あるなり。
上に悪(にく)むところ,もって下を使うことなく,
下に悪むところ,もって上につかうることなかれ。
前に悪むところ,もって後に先だつことなく,
後に悪むところ,もって前に従うことなかれ。
右に悪むところ,もって左に交わることなく,
左に悪むところ,もって右に交わることなかれ。
これをこれ『絜矩の道』という。

これを岩波文庫の訳をもとに現代語訳すると,

そこで,優れた人物には『絜矩(けつく)の道』という方法があるのだ。
つまり,目上の人にされてイヤだと思うことは,
そんなやり方で目下の者を使ってはならないし,
目下の者にされてイヤだと思うことは,
そんなやり方で目上の人に仕えてはいけない。
前を行く人にされたらイヤだと思うことがあれば,
そんなやり方で後ろから来る人の前に立ってはいけないし,
後から来る人にされてイヤだと思うことがあれば,
そんなやり方で前の人についてはいけない。
自分の右にいる人からされてイヤだと思うことは,
そんなやり方で自分の左にいる人に接してはいけないし,
自分の左にいる人からされてイヤだと思うようなやり方で
右の人に接してはいけない。
こういうのを『絜矩の道』,すなわち身近な一定の基準をとって
広い世界を推しはかる方法というのである。

となるでしょうか。

注釈には『絜矩の道』について,
「『絜』は提携の意。『矩』はさしがね,定規。
さしがねを手にとってはかる,
つまり自分のまごころを基準として他を思いやること。
ここではそれを上下四方にわたって広く行うことを説く」
とあります。

つまり
「自分の心をものさしにして人の心を推察し,
自分がされてイヤなことは,
(人にとってもイヤなことだから)人にしないようにする」
ということです。

一言でいえば,
「自分がされていやなことは,人にもするな」
ということになりますが・・・。

これはいうのは簡単ですが,
実践するのは容易ではありません。
たしかに
「自分がされてイヤなことは人にはせず,
自分がしてほしいと思うことを人にしてあげる」
という生き方が実行できれば,
職場でも家庭でも好かれること間違いなしです(笑)。

ただそのためには自分の好き嫌いや利己心を克服する必要があり,
さらに発達の問題を抱える人たちにとっては,
自らのこだわりをおさえ,
定型発達者との心理的傾向の違い
(感情や世間的常識がわかりにくい)
などのハードルを乗り越えなければなりません。

ただ大まかな方向性として,
「自分がされてイヤなことは人にもしない。
自分がしてもらいたいことを人にしてあげる」
という生き方が,
対人関係円満の秘訣であるということです。

大げさに言えば
「東洋の賢人が教える対人関係の極意」
ということになりますね。

次回以降もこの種の
「言うは易く,行うは難し」
というお話になるでしょう。
またお時間があれば,おつきあい下さい。

2015年2月8日日曜日

G.C.ウィリス先生の日本語HP

ブログ管理担当のまさぞうです。

このブログでも何度もとりあげている、
カナダ人内科医G.C.ウィリス先生(1923~2012)の
日本語ホームページが出来上がりました。
https://sites.google.com/site/virtualclinicofdrgcwillis/home/japanese

動脈硬化とビタミンCに関する仕事についても紹介しています。
大先生はこの研究業績で
1953年にカナダの内科系最優秀研究賞を受賞されました。
「動脈硬化の原因は高脂血症ではなく、高血圧による血管壁の損傷であり、
それはビタミンCで治療できる」
ということを動物実験と臨床試験で完璧に証明しています。
当時は果物会社から非常に魅力的な研究支援の申し出があったそうですが、
先生は中国にキリスト教伝道に行くからと断ったのだそうです。

後に同じ
「動脈硬化の原因は血管壁の損傷である」
というテーマで他の研究者がノーベル医学賞を受賞したとき、
ウィリス先生は
「もし私が受賞していたら、今よりも傲慢な性格になってしまっていただろう」
と言ったとか…。

大先生によれば
「ビタミンCの研究は何十年かの周期で繰り返し流行する」
とのことで、またそろそろ流行の時期に来ているかもしれません。

論文中に
「マウス、ラット、ウサギ、ニワトリなどの実験動物とは異なり、
ギニアピッグはビタミンCを体内で合成できない」
というくだりがあります。

私は以前御家族から、大先生は自宅で「ギニアピッグ」を飼育して
実験に使っていたと聞き、
庭に大きな豚小屋を作っている情景を想像していましたが、
今回、ギニアピッグが日本でいうモルモットであることを初めて知りました。
まあブタよりは飼いやすいでしょうけれど、
それでも自宅で飼育した動物で実験・研究を行うとは、
恐るべき研究者魂です。

それだけの業績をなげうって、
アジア奥地での伝道医療に献身するというのは、
普通の日本人にはできない発想ですね。
そのレベルの頭脳をもってへき地医療に赴いたからこそ、
病歴と身体所見だけで9割以上診断できる、
という臨床医として究極の境地に到達されたのでしょう。

私なんかは大先生の知識・技術の5%くらいしか使えていないですけど、
それでもビタミンCは毎日服用させていただいております、ハイ。